LC/MSで体液中のたんぱく質をスクリーニング

 

@    存在量が著しく異なるたんぱく質のスクリーニング 

  血清Aと血清Bの中の個々のたんぱく質の量をLC/MSで比較することができます。

 

     血清A, Bをそれぞれ1ml凍結乾燥し、血清Aは通常の水で溶解した酵素で酵素消化

し、血清BH2O18Oは安定同位体で18で溶解した酵素で消化します。酵素消化は

加水分解であることから、血清Bのたんぱく質から生じたペプチドのカルボキシル基

O18が取り込まれます。 

          

血清Aと血清Bの消化物を混合し、その一定量をLC/MSで測定すると、

一種のペプチドは次のような形で検出されます。

                                

       

   

      

 酵素消化の際、カルボキシル基のOは理論上、2個ともO18に置き換わるはずですが

実際は上記のように、ある程度の率で1個のみが置き換わることが確認されています。

Isomatch-webはそれを含めた解析を行い、血清A由来のペプチド、血清B由来の

ペプチドで1個のOO18に置き換わったものと、2個のOO18に置き換わったもの

との3種類のペプチドの比率を計算してくれます。

 

A    アミノ酸変異を起したたんぱく質のスクリーニングは可能か?

   1残基のアミノ酸変異が起きた部位を含むペプチドが若干なりともHPLC

リテンションタイムのズレを生じれば可能です。

   上記のデータでお分かりのように、実測上は3種類のペプチドが確認されるのが

  普通ですが、もし、1種類のみであれば、カルボキシル基がO18に置き換えられた

ペプチドが存在しないということで、この場合、血清A由来のペプチドと血清B由来

のペプチドにリテンションタイムのズレが生じている可能性が考えられます。

2種類のペプチドが検出される場合は、1個のOO18に置き換わったものと

2個のOO18に置き換わったもののペプチドである可能性が大で、血清A由来の

ペプチドがどこかに消えうせてしまっている可能性があります。この場合も、血清A

由来のペプチドと血清B由来のペプチドにリテンションタイムのズレが生じている

可能性が考えられます。

残基の変異によるリテンションタイムのズレはさほど大きくはないことが予想され

るので、周辺のペプチドを解析することにより変異ペプチドを捕まえることも可能である

といえます。もっとも、どちらの血清由来のペプチドが変異部を含むものかはシーケンス

解析を待たねばなりませんが。

 

B    現実問題としてのスクリーニングの難しさ

   血清をサンプルとした場合、アルブミンとグロブリン由来のペプチド濃度が他の

たんぱく質由来のペプチドよりも非常に高いということがMS測定上の問題となります。

 HPLCの分離(逆相カラム)ですべてのペプチドが個々に分離(リテンションタイム上)

されることはなく、一時に数種類のペプチドが溶出されてくることは普通で、このときに

MSが検出するペプチドはアルブミン、グロブリン由来のもの中心で、それらは強いイオン

として捕捉されます。その他のペプチドのイオンは相対感度として非常に低く抑えられる

ことから見失いがちで、捕捉は容易ではありません。

 どうすればよいか。アルブミン、グロブリンを特異的に除いた血清を使えばという考え方

もありますが、それらを目的としたアフィニティーカラムの精製は他のたんぱく質も一緒に

連れ去ってしまう危惧があることから使用は疑問です。

 本実験法が完全対比を目的とすることからもそのような前処理は望ましいとは云えません。

 イオン交換カラムの精製を第一ステップとし、フラクショネーションを10区間ほど行い

その1区間ごとのフラクションを逆相カラムでLC/MSを実施するということが最も現実的

であると考えます。捕捉できるペプチドも最初から逆相カラムによるLC/MSを行なうよりも

圧倒的に多いことは保証できます。

 これによって、レファランスに比べて、量的に異常に多く、または、少なく存在する

たんぱく質を捕まえることができるかもしれません。

 場合によっては内部変異を起したたんぱく質の捕捉もできるかもしれません。